薄暮のころ、空のグラデーションが非常にキレイです。鉄道の有名な撮影場所なのかも知れませんが、時間帯を変えて、自分のイマジネーションを高めて撮影に臨んでいます。橋脚と鉄道に対して真正面から見ることによって直線的なラインの強さが生まれている。車両の絶妙なブラしかた。画面の真ん中が明るくなっている光の加減。この時間帯に鉄道が走ってくればこうなると、撮る前に頭のなかで作り上げられていると思います。作者は鉄道が好きで撮っているのかもしれませんが、鉄道イイでしょ!と語っている写真ではありません。鉄道だけでなく、地上にはぽつんと街灯がついていて人の生活を想起させます。山の稜線や川も入れることによって奥行き感を出しているのもいい。極めて緻密に撮られているので鑑賞していて気持ちがいいですね。この一秒を逃してしまうと撮れないという、その集中力もすばらしいです。(福田健太郎)
なんでもない水溜りだったと想像しますが、人それぞれの豊かな眼差しと発想力によって、どこでも写真は撮れることを教えてくれる一枚です。映り込んでいるのは煌びやかなイルミネーションで、雨粒の広がりと同じく、丸い形が被写体の連動性を高め、リズミカルで優雅な佇まいを見せてくれました。当然ながら夜の時間帯に撮影していると思うのですが、繊細な波紋の滑らかさを見事に再現し、その美しさが惚れ惚れする要素でもあります。この作品を眺めてうっとりするとともに、写真の面白さを再認識する作品だと思います。(福田健太郎)
初秋を彩る曼珠沙華は、どちらかと言えば淑やかな、和を意識して捉えた作品を多く拝見しますが、この作品は豪快なほどの勢いを感じます。どちらかの寺院の境内ではありますが、画面から溢れ出てくるのは、生命を宿した植物の逞しさ。それは、地面にカメラを置いたのではないかと思うほど、低い位置からワイドのレンズで見上げるように写したことが奏功し、手前の花に接近したことで遠近感が強調され、伸びやかさも出ました。鮮やかな彩りに再現できる光を読んでいることも印象を強める結果となり、実によく考えられ、巧みなテクニックで撮影されていることが伺えます。(福田健太郎)