昔々、あるところに、子どもを可愛がる心優しいおじいさんとおばあさんが住んでいました。ある日のこと、おじいさんが浜辺へ漁に出ると、浜辺に打ち上げられた美しい貝を見つけました。その貝はまるで真珠のように輝き、手のひらにすっぽり収まるほどの大きさでした。おじいさんはその貝を持ち帰り、おばあさんと一緒に眺めました。
「なんと美しい貝じゃろう。これほど美しい貝は見たことがない」とおじいさんが言うと、おばあさんも「きっと何か良いことが起こるに違いないよ」と喜びました。その晩、二人が寝静まった頃、貝の中から微かな光が漏れ出し、やがて美しい女の子が姿を現しました。女の子は貝殻のように透き通るような肌と、海の色を映したかのような瞳を持っていました。
おじいさんとおばあさんは驚きましたが、それ以上に喜び、その子を「貝殻姫」と名付けて大切に育てることにしました。貝殻姫はすくすくと育ち、その美しさは村中に知れ渡るようになりました。貝殻姫が成人する頃には、その噂は遠く都にまで届き、多くの若者たちが貝殻姫に求婚するようになりました。中でも特に熱心だったのは、五人の貴公子たちでした。
彼らは皆、貝殻姫を妻にしたいと願い、毎日おじいさんの家を訪れました。貝殻姫は彼らの熱意に心を動かされ、こう言いました。「私を妻にしたいと願うのであれば、私の出す難題を解決してください。もしそれができれば、その方と結婚いたしましょう。」貴公子たちは皆、喜んでその難題を引き受けました。一人目の貴公子には、遠い海の底に咲くという「夜光の真珠花」を持ってくるように求めました。
二人目の貴公子には、嵐の夜にしか現れないという「幻の虹色の鱗を持つ魚」を釣り上げるように求めました。 三人目の貴公子には、海底に沈んだという「竜宮城の秘宝の玉」を探してくるように求めました。 四人目の貴公子には、世界の果てにあるという「永遠に光を放つ珊瑚」を持ってくるように求めました。 そして五人目の貴公子には、空に輝く「一番星の雫」を持ってくるように求めました。
貴公子たちはそれぞれ、貝殻姫の難題を解決するために旅立ちました。しかし、誰一人としてその難題を解決することはできませんでした。夜光の真珠花はあまりにも深く、幻の魚は姿を現さず、竜宮城の秘宝は見つからず、永遠に光を放つ珊瑚は手の届かない場所にあり、一番星の雫は空から落ちてくることはありませんでした。彼らは皆、困難な旅の末に諦め、意気消沈して帰っていきました。
やがて、貝殻姫がこの家にやってきて二十年が経ちました。ある満月の夜、貝殻姫は美しい光に包まれ、おじいさんとおばあさんにこう告げました。「私は、海の神の使いとして、この世に遣わされました。皆様に海の恵みと、争いのない平和な心をもたらすためでした。しかし、この地には、もう私の役目はありません。」
貝殻姫は悲しむおじいさんとおばあさんを優しく抱きしめ、そして月の光とともに、ゆっくりと空へと昇っていきました。貝殻姫が昇っていくと、その体から小さな光の粒がこぼれ落ち、それらはやがて美しい真珠となり、地上へと降り注ぎました。
おじいさんとおばあさんは、貝殻姫が去ってしまったことを悲しみました。しかし、貝殻姫が残していった真珠は、枯れることのない海の恵みとして、村の人々を豊かにし、争いのない平和な日々が長く続いたとさ。
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