JUDGE REVIEW 審査講評

天体写真家
沼澤 茂美
Shigemi Numazawa
応募頂いたすべての作品を丁重に拝見させていただき、さまざまな場所や季節、時間が作り出す多様な星空、それぞれの異なる思いを感じることが出来ました。このような有意義な機会を与えていただいたこと、そして、応募してくださったすべての皆さんに感謝申し上げます。
多様な作品から3つを選択するのは非常に困難な作業であり、まず第一次の審査で63作品を選択、その後二次審査で19点、三次審査で8点をえらび、最終選考を行いました。
「星空と地上風景が作り出すその状況に対峙し、会話し、時には自然とのかけひきに興じる」これは星空撮影を楽しみ、幸せな撮影活動を続けてゆくための核となるところです。何に感動したのか、何を伝えたいのか、自然との対話を楽しんだのか、そんな気持ちが伝わる作品・・・それが本コンテストの主題となるところでした。
カメラの性能が向上し、さまざまなデジタル処理技術も普及した現在では、作品作りへのアプローチの仕方も多様化しています。ただ、今回は、撮影者が体現したシーンを優先すると言うことから、はっきりと合成と分かるような作品、あるいは、違和感を感じる作品は選考から割り引いて見させていただきました。具体的には、星空と地上風景を合成したと分かる作品や、各部の明るさやコントラストのバランスに違和感を感じるもの、無理なコントラスト強調によりトーンや色調が破綻しているものなどです。
3次審査に残った8作品は、いずれもその場の状況がリアルに伝わってくる魅力ある作品です。また、これらの中には、色温度の調整や明るさコントラストの調整をあと少し踏み込んだなら、見違えるような作品に変貌する、と言うような伸びしろを秘めた作品も見受けられました。
受賞した3作品は、いずれも自然な撮影動機が感じられ、ある意味とてもナチュラルな作品です。しかし、見る人が自然にその場面に入り込めて感動を共有できると言う点が、他の作品と異なっていたように思います。もちろん、他の作品が劣っているとか、面白くないというわけでは決してありません。写真は自己表現であり、コミュニケーションの1手段として各人各様の作品が生まれて当たり前であり、優劣は存在しません。これからもより多くの人が星空に対峙し、その場を感じ、考え、対話しながら自由な創作活動を続けていただくことを期待します。
8月上旬、薄暮が終了し暗夜が訪れた頃の南から南西の空と思われます。標高の高い場所からの素晴らしい景観です。夏の天の川の輝きに感動されたことでしょう。雲海が地上風景を覆い街灯りをある程度遮断してくれたことが、主題を明確にするのに役だったと言えます。シンプルな構図だからこそ、空と大地の迫力や畏敬の念を抱かせる雰囲気を強く感じます。特に大きなモニターで見た時の臨場感は圧倒的でした。