JUDGE REVIEW 審査講評

野鳥カメラマン
山田 芳文
Yoshifumi Yamada
たくさんのご応募をいただき、大変嬉しく思っています。ありがとうございました。風景的な写真、生態写真、図鑑的な写真などいろいろなタイプの作品があり、楽しく拝見させていただきました。最終的に13点までしぼりこみましたが、13作品は全て、大変素晴らしい写真ばかりだったので、この中から3点を選ぶのは、大変心苦しく、それなりの時間を必要としました。
今回は、①明らかに演出とわかるような枝を設置した舞台で撮影された写真(カワセミの写真に数多くあった)や②過剰にトリミングしたことで、画像が崩壊してしまった写真(飛翔写真に多かった)、③過度なレタッチや合成が疑われる不自然に感じる写真、につきましては少し割り引いて審査させていただきました。
3つの受賞作品は鳥の種類や写真のタイプもそれぞれに異なりますが、共通する良いところがあります。まずは、適切な位置にピントが合って、ブレていない写真であるということ。合わせるべき位置にピントを合わせてブレないように鳥を撮ることは、実はそれほど簡単ではありません。今回も、ピントがあまいことが理由でセレクト外となった作品や、意図的にブラしたのではなく、ブレてしまったことが原因で選考外となった作品が少なからずありました。
次に、主役の鳥が周囲から浮かび上がっている写真であること。背景が煩雑な写真、脇役が主役の鳥よりも出しゃばってしまった写真、主役が周囲になじんでどこにいるのかわかりにくくなった写真などは、見る人が撮影されたシーンを共有しにくくなり、写真がもつ物語に入っていけなくなります。
そして最後に、写真に内容(メッセージ)があることです。名人が最新で最高の機材を使っても、写真に中身がなければ、見る人の心を動かすことはできません。
受賞3作品は、これら3つの点を全てクリアしていたので、見る人は撮影シーンを想像しやすく、写真が持つメッセージを読むことができたのだと思います。
喰うもの(オオタカ)と喰われるもの(カルガモ)を対比させて、俯瞰気味からシンプルな画面構成でまとめられています。フォーカスがオオタカの目にきっちりと合い、ブレていないので、写真を見る人は自然にオオタカの目に吸い寄せられていきます。カルガモがひっくり返っていることで、(いい意味で)それほど生々しさはなく、鑑賞者が一連の出来事を想像しながら写真に入っていけるいい作品だなぁと思いました。