JUDGE REVIEW 審査講評
![航空写真家:伊藤 久巳(Hisami Ito)](img/pht-aircraft2018-photo-contest01.jpg)
航空写真家
伊藤 久巳
Hisami Ito
「これでどうだ、オレの渾身の作品だぞ」「私の作品、よーく見てね」
ご応募いただいたすべての作品を大きく開くたび、このように語りかけてくる。それはそうだ、応募点数は一人1点という規定なのだから、すべての方がご自身のベストを選んで送っていただいたのだ。レベルが低かろう道理がない。それでも、その数百点の中からたった3点の入賞作品を選ばなければならない厳しさ。飛行機フォトコンの審査には慣れているはずの私なのだが、至難の上にも至難を極めた。
多くの作品に共通して言えること、それは撮影コンテをしっかり持って撮影されていることだ。「この飛行機がこう飛んできた。それなら私はこう撮る」という撮影意図が、はっきり画面が主張する。飛行機が持つ綺麗さなのか、迫力なのか、空の雄大さなのか。ご応募いただいた作品点数分、千差万別だ。1枚1枚、こうして作品たちとの対峙。それは厳しい中ではあるが、楽しい時間でもあった。
上位にはこの3作品を選ばせていただいた。いずれの作品も十分に私を驚かせてくれた。選評にも少し書いたが、写真は見る人を驚かせたら勝ちなのだ。審査ではたくさんの驚きがあったが、この3作品の驚きがもっとも大きかったことになる。まずはこの場に立てたこと、そしてこの気象条件を呼び寄せたこと、この瞬間にシャッターを切ったこと、レタッチが適切だったことなど、すべてが融合して他の作品のほんの少しばかり上をいった。
多くの応募作品に出会ったが、今思うのは、これからも皆さまそれぞれが今の路線のまま作画していっていただいきたいということ。コンテから始まる撮影する時の態勢を貫き、またこのような機会があれば拝見させていただきたい。
一方で、今回の上位3作品のように光線を活かし、操った上で撮影することは大事だが、飛行機写真では日中の晴天順光下での撮影も侮ってはいけないことも頭の隅に入れておいていただきたい。
最後になりましたが、今回の航空機フォトコンに多くの力作をお寄せいただきました皆さま全員に多大な感謝の意を表します。どうもありがとうございました。
ブルーインパルスの集合課目、デルタロール。それをトータルの写真力で最高の作品へと昇華させた。まず、撮影では一糸乱れぬデルタ隊形を端正に捉える。ピント、解像力ともに素晴らしく、機体が小さいにもかかわらず、1機1機すべてディテールが繊細に再現されている点がとても好感だ。この瞬間は別に待ってくれているわけではなく、いきなり目の前に出現するのだから、とっさのコンテ創り、とっさの技術力が要求される。その上で、逆光で色が気に入らなかったのだろう、レタッチではモノトーンを選択。背後の雲を機体の部分だけ三角形に白く残して機体を際立たせ、それ以外の部分を暗く沈ませるという手法に出た。そして、そこに真っ白なスモークを引く。1番機のスモークに入って光線が当たらない4番機のスモークを白い中に黒くのせ、6機分のスモークすべてを表現しきった点も見逃せない。タイトルの付け方がまた振るっている。「青い翼」と言いながら、画面はモノトーン。でも、作品から十分にT-4の青い翼を連想できる。堂々の大賞に推したい。