入った当初は何事もなかった森だったが、次第に当たりの景色がおかしくなってきた。
嫌な夢を見ているような、何となく五感が曖昧な感じになってきた。
眉間が痺れるような、項が後ろへ引っ張られているような。
昔、魔女を倒しに来た騎士たちが大勢返り討ちになったって言ってたな。
彼らも亡霊になってこの森を彷徨っているとか・・・・
そういえば、さっき馬の嘶きが聞こえたような・・・・。
森の奥までやってくると、誰もいないはずなのに、なぜか周囲が騒めいているように感じる。
鹿も熊も狼も見当たらない。鳥の気配も感じられない。なのに、風もなにのに当たりがひどく騒々しい。
音もしない森の中でそう感じ続けた。
いや!見られている。
確実に、其処彼処から視線を感じるんだ。
髑髏のような、虚ろで無表情な視線を感じる。
紛れもない、敵意が・・・・。
いつの間にか、フラフラと覚束ない足で森中を彷徨っていた。
全身が痺れ、意識は混濁し、視線と騒めきが森中から自分めがけて突進してきた!
「もうやめてくれ!」
そう叫んで振り返った先には・・・・
ぎゃぁーーーーっ!!
化け物の背中に乗った黒い魔女が襲いかかってきた!
俺は化け物から逃げようと、必死で駆け出すことしかできなかった。
はあ、はあっ・・・・・!
息が続かなくなるほど滅茶苦茶に森を駆け抜けて、もう駄目だと覚悟して立ち止まる。
だが何も起こらなかった。
肩で息をしながら顔を上げると、日の光が柔らかく差し込む森の姿が目の前にあった。
振り向くと、いつの間にか化け物と魔女は消え、頭の上では小鳥が囀っていた。
しばらく呆然としながら歩くと、家へと向かう道に出た。
そよそよと風が吹き、鹿の鳴く声が森の奥から聞こえた。
そして行く先から、心配して探しに来た人たちの俺を呼ぶ声が聞こえた。
もう、帰ろう。
こんな事は、懲り懲りだ・・・・。
bravo!数
bravo! さらに
bravo! bravo! 済