JUDGE REVIEW 審査講評
鉄道写真家
助川 康史
Yasufumi Sukegawa
今回入賞した作品、また漏れてしまった作品も含め、どの応募作からも「鉄道愛」をひしひしと感じました。その鉄道に対し、どのようにアプローチしているかが、作品によって異なります。
入賞した各作品は、どれも狙いが明確です。写真というものは、作者の意図するものがしっかりと表現されていなければなりません。空気感や時間、あるいは作者が持つ「思い」を入れる人もいます。うまくメリハリをつけ、その狙いがしっかりと画面の中に構成されている作品が、上位に入賞しています。
鉄道ファンの中には、列車も風景も大きく、というように、欲張ってしまう人がいます。しかし、主役がどれかを明確にし、題名一つ取っても、しっかり自分の中でかみ砕いて表現できている物がよかったかなと思います。
このコンテストではどのような作品が入賞しているのか、という傾向を感じていただいて、また違った見方の作品が応募されるといいですね。
鉄道写真家
山下 大祐
Daisuke Yamashita
「懐かしの鉄道写真」がテーマということで、古い写真が多く応募されていました。「よく撮影していたなあ」というシーンの写真や、「こんな所を撮っていたら今の時代はとても貴重だ」という写真です。
今撮れる写真も、いつかはそのような見方ができるようになります。そういう意味では、審査する側としても楽しめるコンテストでした。
一方で、古い写真ではなく、現代の写真を撮って懐かしさを表現する作品もあり、両者の対比という2局的な見方もできるコンテストでした。
全体的な作品の印象としては、鉄道要素を大きく主張している作品は比較的少なかったと思います。車両を美しくかっこよく、という作品よりも、情景や人、風景を含めた写真が数多く応募されていました。
この作品で一番いいなと思ったのは、空間の表現です。このような写真では低く構えて撮りたくなりますが、そうすると子どもの首から上が白い部分に掛かって浮いてしまいます。
撮影者の方は、構えて撮ったのではなく、とっさに風景を切り取ったのでしょう。
門司港駅は昔からよく撮影される場所です。その有名どころで作品性を際立たせるには、「出会い」しかありません。この作品は、親子との出会いを的確に捉えています。写真とは、その瞬間を捉える一期一会の世界です。まさにそれを活かして撮られた作品です。