JUDGE REVIEW 審査講評
天体写真家
沼澤 茂美
Shigemi Numazawa
4年ぶりに星空写真コンテストが開催できたこと、そして非常に多くのご応募があったことに感謝いたします。
この長い期間、カメラもレンズも大きな進化を遂げたと感じます。また、行動制限やさまざまな環境の変化、不自由な条件が、逆にさまざまな試行錯誤を誘発し、作品の多様性をより広げたのではないかという期待を持って本写真コンテストに臨んだのも事実です。
実際、今回の応募作品の特徴として、さまざまなシチュエーションを受け入れた作品が増えたことが挙げられます。郊外の美しい星空ではない、たとえば市街光に照らされた空、月夜、人工光にあふれた場所、薄明や薄暮の中での星空、それに雲や電線などの人工物など、これらを積極的に取り入れ他作品は、身近な星空の中に思いや感動を見いだしたことが伝わってきます。
照明を積極的に利用した作品も急増しました。これは海外の作品などの影響が大きいと推察します。その中でも、「星空に照明を向けない」「演出だけにとらわれない」あくまでも美しい星空に配慮した作品は、見る人の支持を受ける良作品を生み出していると思います。
星空と地上風景を個別に撮影して合成する作品や、短時間に多数の画像を撮影してそれを合成して仕上げるような手法も一般化しており、応募作品のかなりの数がそのようにして作成されたものでした。今日ではそれらの作品は容認される傾向にあり、本コンテストでもそれらを含んだ審査となっていますが、あくまでも撮影者が体験した星空、実際に目にして感動した光景が伝わってくるかどうかは重要な価値判断となります。
入賞された方、入賞されなかったか方、そして応募されなかった星空写真ファンも含めた皆さんが、是非とも、身近な星空風景の中に素晴らしい感動を見いだされることを願っています。
南東の空に昇った夏の天の川を追って輝く月の共演です。刻々と変化する星空風景は、時に想像もしなかった素晴らしい光景を作りだしてくれるものだとあらためて感動させられました。足もとの近景から水面、月、天の川に至るすべての要素がうまく協調して一つの主題を作り上げている様は、見事という他ありません。おそらく、身近な世界にはまだまだ未発見の魅力的な表情が隠されているのだと言う、そんな期待感も抱かせてくれるのではないでしょうか。