JUDGE REVIEW 審査講評
天体写真家
沼澤 茂美
Shigemi Numazawa
いつもとは異なる社会状況の中で、今年の星空写真コンテストの応募は変化するのだろうかという一抹の不安を払拭するかのように、予想をはるかに上回る応募に感謝いたします。そのほとんどが今年の作品であり、非常に多種多彩な内容である事にも驚かされました。1枚1枚から伝わる作者の思いはさまざまであり、撮影時の心理やまわりの状況を想像するのはとても有意義なことだと感じています。
膨大な作品の中から受賞作品を選ぶことは常に困難を伴いますが、今回は、出口の見えないコロナ禍にあって、元気を与えてくれるような作品をという要素を加えての審査とさせていただきました。1次審査では67作品、二次審査で24作品に絞り込みました。その中から各賞の決定と致しました。
レギュレーションに関しては、実際に目にした光景とは異なるシーンの合成、公共性のない著作物を含んだ作品、宗教色の色濃く伝わる作品、また、入ってはいけない場所での作品、公共のマナーに反する撮影や危険と思われる撮影による作品などの要素を考慮して慎重に審査させていただいています。応募作品の中にサインが必要かどうかといった写真を見る人の気持ちを配慮する姿勢も重要な事だと思います。ただ、合成などの手法は非常に多様化し、その痕跡を識別するのが困難になってきたと同時に、どこまでを認めるかも見極めが難しくなってきました。基本的には応募する皆さんの作品作りに対する姿勢に頼ることになります。
受賞された方々もそうでない皆さんも、これからも星空の下で出会う感動やそして葛藤などをかみしめながら、有意義な作品への取り組みを続けて行かれることを期待致します。
翌日の登頂を控えた休憩地点の光景でしょうか?空に輝く北斗の星々と地上のテントの列びが呼応しているようで、一見すると地上のリアルさを打ち消し、非現実の世界に誘うような不思議な感覚を与えてくれます。ソフトフィルターによって北斗の形も明瞭で、単色の星空とカラフルなテントの絶妙なバランスを生み出したといえるでしょう。しかしディティールにはさまざまなドラマが潜んでいるようで、見れば見るほど味わいが感じられる作品です。