JUDGE REVIEW 審査講評
天体写真家
沼澤 茂美
Shigemi Numazawa
今年も多くの作品応募ありがとうございました。思いのこもったさまざまなシーンに接し、撮影した環境、撮影時の感情などに思いをはせるとき、本写真コンテストの重さと深淵さというようなものが強く伝わってきます。昨年にくらべ、撮影のバリエーションはさらに広がったように感じました。人物を入れたストーリー性の強い作品も多く、景観や撮影手法においても作者のメッセージが明確に表れているものが多いと感じました。ほとばしる内面を主題に託したと感じられる作品や、その場の感動がリアルに伝わってくる作品は、やはり心の奥底に突き刺さってくるもの、写真の力みたいなものを感じます。写真は作者の心を写す鏡であり、そしてコミュニケーションの手段です。そこに優越が存在するわけでは決してありません。自由に感じ自由に表現する。今回受賞した作品はそういう自由な思いがとても強く感じられた作品でした。審査は初期審査で全応募作品から37点を選び、最終選考へと進みました。今回新設された「胎内星まつり特別賞」は、月刊天文ガイド編集部、胎内市と胎内星まつり実行委員会の私の3者によって選考されたものです。
地上に広がる人工の光の海と星々の軌跡が見事に融合したスペクタクルな作品です。明るい人工光に負けてしまう星の光も、今日の比較明合成という撮影手法でその存在を明確に再現できます。悠久の時間変わらぬ輝きを保ち続けてきた星々が描き出したほんの1時間ほどの軌跡。その中に精一杯の輝きをみせる人々の営みの光は、ある意味とてもはかない感じさえ伝えているようです。人工光と星々の光を遮る雪を冠した山々の存在も素晴らしい。