鉄道フォトコンテスト2025 結果発表
応募

審査員講評

鉄道写真家 山下 大祐さん

国内外様々な鉄道を舞台にした皆様の力作を大変楽しく審査しました。フォト部門の上位入賞作品については初見から入賞を確信したのに対して、入選10作品については非常に力が拮抗したなかで選出しました。大いに悩んだ点です。今回より加わったムービー部門は、撮影もさることながら編集と全体構成も大きな評価基準です。まさに組写真のようです。1カット1カットにインパクトを残すのではなく、その大小を上手に組み合わせて、まとまりのある1本に仕上げていることが大切です。音ののせ方やテキストの入れ方にも作者の思いが伝わります。その意味で、やはりある程度時間を掛けたであろう作品が強かったようです。次回以降もこの部門が盛り上がることを期待しています。

ゲスト審査員講評

旅系YouTuber しおねるさん

鉄道という同じテーマから、これほど多様で豊かな世界が生まれるのかと、ワクワクが止まりませんでした。 車両の存在感を力強く切り取った写真もあれば、風景の中に溶け込む鉄道を静かに描いたもの、日常の一瞬を丁寧にすくい上げたものもあり、画面越しにカメラマンさんの感性がまっすぐ伝わってきました。 どの作品にも撮影者の思いや時間が宿っています。それぞれの写真を通して「その人が見ている鉄道」に触れられたことが、とても嬉しかったです。 素敵な作品をたくさんお寄せいただき、ありがとうございました。 皆さんの写真に触れるたび、自分が見落としていた景色や角度に気づかされ、私自身ももっと自由に、もっとのびやかに撮ってみたいと思いました。

フォト部門

大賞 ソニーポイント 50,000 円分

審査員講評(山下大祐さん)
見事な流し撮りです。長らく活躍した国鉄型特急車がついに引退となる、その直前の走りを撮りに出かけた作者は、冒険的な挑戦を成功させました。桜から飛び出してくる先頭部をこのような低速シャッターで流し撮りするだけでも相当なテクニックが必要ですが、左右にわずかにしかない空間に計画的に先頭部を見せ後方を桜に隠す、といった構図的にも完璧な1枚です。撮り直しのきかない被写体と季節の組み合わせに対して、このような挑戦ができたのは、日頃の鍛錬からくる自信、そして撮るならより良いものを撮るという向上心の賜物ではないでしょうか。

山下大祐賞 ソニーポイント 30,000 円分

審査員講評(山下大祐さん)
車庫に入るN700S新幹線の手前を横切る基地スタッフをシルエット調に見せた作品です。差し込む光のトーンと闇に浮かぶ新幹線。おそらくはそんな状況にレンズを向けたものと思いますが、突如訪れた人物の交錯に対して、撮らねば!と反応した作者は、鍛錬だけでは磨けない感性をお持ちです。車両基地のイベント時で撮影したとのことでスナップ的な撮影状況でありながら、車両に正対したアングルが絵画的でもあります。これは写真を撮る時のカメラアイとして、共感できる美的感覚を感じました。下部の線路の描写は減らしたい気もしますが、これは絵画ではなく写真であることの主張要素と取れば、ユニークにも思えてきます。

しおねる賞 ソニーポイント 30,000 円分

審査員講評(しおねるさん)
列車とお揃いのスイカ模様の2つの背中。 この遊び心と愛らしさに、とても惹きつけられました! 夕暮れの柔らかな光に包まれたこの一瞬を見ていると、夏の日の夢を覗き込んでいるようで、自分の子ども時代までふっと思い出されます。 そして虫取り網を片手に手を振るふたりの後ろ姿からは、列車を心待ちにする純粋な期待感と、日常の中にある小さなときめきがやさしく浮かび上がってくるようです。 列車と子供たちの心の通い合いまで写し撮ったような、その空気のやさしさごと閉じ込めたような、いつまでも心に残る一枚だなと感じました。

αユーザー賞 ソニーポイント 30,000 円分 ※「α」で撮影された作品が審査対象。
「α」システムの性能や特徴が最大限活かされており、「これぞα」という1枚に与えられる賞です。

審査員講評(山下大祐さん)
瀬戸大橋の東に位置する半島部では、日々多くの写真家がカメラを連ねています。おそらくれんさんもそのおひとりでしょう。そのためイメージの既視感は評価の大敵となるわけですが、この作品は一線を画すインパクトの大きな一枚です。とくに上下に広くとった暗部が見事です。列車が小さいからこそ空間の見せ方が作品を左右しますが、周囲の状況をあえて見えにくくする選択は、画面のハイライトを際立てました。暗部描写を印象的に調整した作者と、それに応えたαシステムの勝利といえます。それにしても見事な雲間の太陽。非常にあやしい雲行きでも撮影を諦めなかったからこそ、最後の最後にお天道様が微笑んだのでしょう。

ムービー部門

ムービー部門賞 ソニーポイント 50,000 円分

審査員講評(山下大祐さん)
寝台列車「カシオペア」の最終運行に乗車したご自身の東北旅を、主観的なカメラワークで撮影しつつ、走りのカットも織り交ぜながら仕上げた作品です。全体の構成として撮影に時間と手間が掛かっていることはもっともですが、夜行列車の魅力とこんな旅に出たいと思わせてくれる旅の訴求力を感じます。コメントにある通りこれこそ作者の狙いで、カシオペアに終始せず東北観光で目にしたものを、しつこくない程度に見せたのも構成力の高さを感じます。最初と最後のカットにつながりをもたせているあたり、ニヤリとさせるいい演出です。

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